
コイル製造において、リッツ線(テトロン被覆)の加工は重要な工程ですが、半田付けや引出線のカットで品質課題を抱えていませんか?
今回は、弊社が実際に取り組んだ「リッツ線の半田工程」と「引出線カット工程」の改善事例をご紹介します。『半田ボールの付着』や『引出線の潰れによる寸法超過』といった課題を、どのように解決したかを具体的に解説します。
リッツ線とテトロン被覆リッツ線の基礎知識
リッツ線とは?高周波特性に優れた導体
リッツ線(Litz wire)は、多数の細い絶縁銅線(エナメル線)を撚り合わせた導体です。各素線が独立して絶縁されているため、高周波領域で問題となる表皮効果や近接効果を低減し、交流抵抗を下げて効率よく電流を流すことができます。
主に高周波トランス、インバータ用トランス、高周波インダクタ、ワイヤレス給電コイルなどで使用されています。
テトロン被覆リッツ線とは?機械的強度と絶縁性を向上
リッツ線は柔らかく、摩耗や絶縁耐力不足といった課題があります。そこで採用されるのが「テトロン被覆」です。
テトロン®は東レが開発したポリエステル繊維(PET)の商標ですが、現在では一般的な呼称としても広く使われています。リッツ線全体をこの繊維スリーブで被覆することで、以下のメリットが得られます。
機械的強度の向上(耐摩耗性・耐引張性の確保)
- 電気的絶縁の補強(短絡や巻線間の接触を防止)
- 耐熱性(130℃程度まで使用可能、クラスB相当)
- 巻線作業性の改善(表面が滑らかになり、整列巻きが容易)
このように「テトロン被覆リッツ線」は、高周波用途のコイル製造に欠かせない導体です。
課題と改善事例|リッツ線加工の品質向上
しかし、実際の製造現場では、テトロン被覆リッツ線の加工において以下の課題が発生していました。弊社ではどのようにこれらの課題を解決したのかをご紹介します。
【課題1】半田工程での課題:半田ボール付着・被覆残り
半田工程時に、指定範囲外に半田ボールが飛散する、または被覆が溶け残ってしまう不良が起きることがありました。
【対策1】半田工程改善|治具活用と二段階プロセス
- 課題1.1 半田ボールの付着
→ 専用治具で指定半田範囲以外の箇所をカバーし、飛散を防止。 - 課題1.2 テトロン被覆残り
→ 半田槽への投入方法を改善。コイル引出線を上下させるだけでなく、投入後に多方向へ動かすことで、溶けた被覆を効果的に除去可能に。さらに「1回目で被覆を溶かす」「2回目で確実に半田付けを行う」という二段階工程を採用。
➡ 効果:半田ボールやテトロン被覆残りのない、きれいな半田付けが可能になり、安定した仕上がりを実現しました。

※冶具に付着する半田ボール (製品への付着を防止)
【課題2】引出線カット工程での潰れによる寸法超過
ニッパーでカットすると切断面が潰れて楕円形になり、指定寸法を超えてしまう不具合が発生していました。特に撚り線構造のリッツ線は潰れやすく、寸法管理が難しい材料です。
【対策2】引出線カット工程改善|専用治具と自動化設備
- 課題2 引出線の潰れによる寸法超過
→ 専用のカット設備と治具を導入し、引出線を固定した状態で自動カット。

治具にコイルをセット➡スイッチを押す➡カットが完了
➡ 効果:治具で固定し、適切な方法でカットすることで、切断面を潰さず、真円に近い形状でのカットが可能となり、寸法超過の問題を解消しました。
工程改善の成果とポイント
今回の改善により、以下の成果を得ることができました。
- 不具合対策:半田ボール付着、被覆残り、引出線潰れといった不良を防止
- 安定品質の実現:自動化によって作業者依存を排除し、品質のばらつきを低減
つまり、工程改善の鍵は「治具」と「自動化」による品質の安定化でした。
まとめ:リッツ線加工の品質改善はプロネックへ
今回は、テトロン被覆リッツ線の半田付けと引出線カットにおける工程改善事例をご紹介しました。
プロネックでは、こうした製造工程における課題に対し、独自のノウハウと技術力で最適なソリューションをご提案しています。
品質向上や量産安定化など、製造工程に課題をお持ちの方は、ぜひプロネック WEBお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。