ワイヤレス充電用コイルの設計と特性
ワイヤレス充電とは
ワイヤレス充電は、ケーブルを使用せずにデバイスに電力を供給する技術です。
ワイヤレス充電の主要な方式とその特徴やコイル設計について解説します。
1.磁気誘導方式(Inductive Coupling)
最も一般的なワイヤレス充電方式です。WPCによって策定されたQi規格はこの方式で、最も広く普及しています。送電コイル(充電パッド)と受電コイル(デバイスの)の間に生成される変動する磁場を利用して電力を伝送します。
【特徴】
短距離伝送: 送電コイルと受電コイルが近接している必要があります(通常は数ミリメートル)。
効率: 高効率(約80〜90%)で、デバイスの位置が重要です。
用途: スマートフォン、スマートウォッチ、電動歯ブラシなど。
【設計と特性】
コイルの形状: 円形や長方形の平面コイルが一般的です。巻線の数や密度、巻き方が効率に影響します。
インダクタンス: 高いインダクタンスを持つコイルが必要です。これは巻数やコイルの直径、コア材質に依存します。
結合係数: 送電コイルと受電コイルの結合係数(k値)が高いほど効率的なエネルギー伝送が可能です。結合係数は、コイルの距離や位置関係に依存します。
使用材料: 銅線が一般的ですが、高周波対応のLitz線を使用することで渦電流損失を低減できます。
【実装例】
スマートフォン充電器: 高効率の平面コイルが使用されます。エアギャップを最小限に抑えることで効率を最大化します。
電動歯ブラシ: 防水性を考慮して、コイルはエポキシなどでコーティングします。
2.磁気共鳴方式(Resonant Inductive Coupling)
共鳴現象を利用して電力を伝達する方式です。送電コイルと受電コイルが同じ共鳴周波数で動作するように設計されています。これにより、離れた距離でも効率的に電力を伝送できます。A4WPによって策定されたRezence規格はこの方式です。
【特徴】
中距離伝送: 数センチメートルから数十センチメートルの範囲で電力を伝達できます。
効率: 位置や距離に応じて効率が変動しますが、比較的高効率です。
柔軟性: デバイスの位置や角度に対して比較的柔軟です。
【設計と特性】
共振周波数: LC共振回路として設計され、送電コイルと受電コイルが同じ共振周波数になるようにします。共振周波数は、コイルのインダクタンスとキャパシタンスに依存します。
高Q値: 高品質(Q値)のコイルが必要です。Q値は、コイルのインダクタンス、抵抗、およびコア材料に影響されます。
コイルの配置: 共鳴現象を最大限に活用するため、コイルの配置や形状が重要です。多層コイルやヘリカルコイルが使用されることがあります。
【実装例】
電動車両の充電: 大型で高効率のコイルが使用され、共鳴周波数を合わせることで充電効率を高めます。
家電製品: 家庭用の調理器具やその他のデバイスで、設置位置の柔軟性を提供します。
3.電磁波方式(Radio Frequency)
電磁波を利用して電力を伝送する方式です。送信アンテナから電力を放射し、受信アンテナで受信して電力に変換します。
【特徴】
長距離伝送: 数メートルから数十メートルの距離でも電力を伝達できます。
効率: 長距離伝送の場合、効率は低下します(10〜50%)。
用途: センサーや小型IoTデバイスなど、少量の電力が必要なデバイスに適しています。
【設計と特性】
アンテナ設計: 送信アンテナと受信アンテナの設計が重要です。適切なインピーダンスマッチングが求められます。
周波数: 高周波帯(数GHz)で動作します。周波数が高いほど、伝送効率とアンテナ設計の難易度が増します。
効率: 長距離伝送では効率が低下しますが、指向性アンテナを使用することで効率を改善できます。
【実装例】
小型IoTデバイス: 低消費電力のセンサーやタグに適しています。
医療機器: 体内埋め込み型デバイスへの無線電力供給。
4.電界結合方式(Capacitive Coupling)
電場を利用して電力を伝達する方式です。送電板と受電板の間に電場を生成し、これを利用して電力を伝送します。
【特徴】
短距離伝送: 数ミリメートルから数センチメートルの範囲で電力を伝達。
効率: 短距離では高効率。
用途: スマートカードや小型デバイスなど。
【設計と特性】
電極設計: 電極として機能する板状構造が用いられます。電極の面積と配置が重要です。
絶縁材料: 高周波に適した絶縁材料が必要です。電極間の絶縁を確保するための設計が求められます。
距離の制約: 送電板と受電板の間の距離が短くなるほど効率的です。
【実装例】
スマートカード: 接触レスでの電力供給。
小型電子機器: 短距離での電力伝送に適しています。
まとめ
ワイヤレス充電には様々な方式があり、それぞれ伝送距離や効率に特長があります。用途に応じた適切な方式を選択することが重要です。
スマートフォンなどの一般的なデバイスには磁気誘導方式が広く利用されていますが、特定の用途や条件に応じて、今後他の方式も採用が増えるかもしれません。
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社内で簡単な磁気誘導方式のワイヤレス充電器を作ってみました。コイル単体のため製品より性能は劣りますが、ケーブルを使用せず電力を供給できています。