高性能コイルボビンに欠かせない樹脂の選び方
コイルボビンの樹脂選定とは
コイルボビンは、巻線に使用する重要な部品です。このボビンに使用される樹脂は、コイルの性能や耐久性に直接影響を与えるため、適切な素材の選定が不可欠です。以下では、コイルボビンに使用される主な樹脂の種類とその特徴について詳しく説明し、適切な樹脂選定のポイントを解説します。
■ ポリアミド(ナイロン)
メリット
耐熱性:
ポリアミドは比較的高い耐熱性を持ち、温度変化に強いです。これにより、コイルが高温になる環境でも形状を保つことができます。
機械的強度:
高い引張強度と弾性を持ち、耐衝撃性に優れています。
耐薬品性:
多くの化学薬品に対する耐性があり、腐食しにくいです。
一般的に樹脂は熱伝導率が低い(放熱性が低い)ですが、熱伝導率の高い製品が存在します。
デメリット
吸湿性:
吸湿性が高く、水分を吸収すると寸法変化や機械的特性の低下が生じる可能性があります。また、形状にもよりますが、吸湿性が高いという特性が成型後の外観、寸法に大きな影響を与えるため、許容できるかどうか事前に検討する必要があります。
加工難易度:
射出成形時の流動性が低く、精密な形状を作りにくい場合があります。
■ ポリカーボネート
メリット
高い耐衝撃性:
ポリカーボネートは非常に高い耐衝撃性を持ち、機械的ストレスに強いです。
透明性:
高い透明性を持つため、コイルの内部を視認しやすいです。
耐熱性:
耐熱性が高く、高温環境でも安定した性能を発揮します。
デメリット
コスト:
他の樹脂に比べて材料費が高いです。
耐薬品性:
一部の化学薬品には弱く、特定の環境では劣化する可能性があります。
■ポリフェニレンスルフィド(PPS)
メリット
非常に高い耐熱性:
連続使用温度が200℃を超えることができるため、高温環境下での使用に最適です。
耐薬品性:
多くの化学薬品に対して優れた耐性を持ち、腐食や劣化に強いです。
機械的強度:
高い機械的強度と剛性を持ち、精密な部品に適しています。
デメリット
加工難易度:
射出成形時の温度管理が厳しく、加工が難しいです。
コスト:
高性能なため、材料費が高くなります。
■ポリブチレンテレフタレート(PBT)
メリット
耐熱性:
比較的高い耐熱性を持ち、高温環境でも安定しています。
寸法安定性:
吸湿性が低く、寸法変化が少ないため、精密な形状を保つことができます。
電気特性:
優れた電気絶縁性を持ち、コイルボビンとして理想的です。コストと性能のバランスが良いため、弊社では一番実績の多い樹脂です。
デメリット
耐衝撃性:
他の樹脂に比べて耐衝撃性がやや劣ります。
耐薬品性:
一部の強酸やアルカリには弱いです。
■ 適切な樹脂の選定
コイルボビンに使用する樹脂を選定する際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
1.”使用環境” コイルが使用される環境の温度、湿度、化学薬品の存在などを考慮します。例えば、高温環境での使用が前提の場合はPPSが適しています。
2.”機械的要求” ボビンがどの程度の機械的ストレスにさらされるかを評価します。高い耐衝撃性が求められる場合はポリカーボネートが適しています。
3.”寸法安定性” 精密な形状が求められる場合は、吸湿性の低いPBTやPPSが選ばれます。
4.”コスト” 予算に応じて材料を選定します。高性能樹脂は高価ですが、特定の性能が必要な場合は投資する価値があります。
5,”加工性” 樹脂の加工のしやすさも考慮する必要があります。大量生産を行う場合は、加工が容易な樹脂が好まれます。
まとめ
コイルボビンに使用される樹脂は、ポリアミド、ポリカーボネート、PPS、PBTなど多岐にわたります。それぞれに特有のメリットとデメリットがあり、例えば高温環境にはPPS、高い機械的強度が必要な場合にはポリカーボネート、寸法安定性が重要な場合にはPBTといった、使用環境や要求される性能によって適切な選定が求められます。最終的には、使用条件とコストを総合的に考慮して最適な樹脂を選定することが、コイルの性能と耐久性を最大化するための鍵となります。
株式会社プロネックでは、コイル製造の専門知識を持つエンジニアが、お客様のニーズに最適な樹脂選定をサポートいたします。コイルの設計から製造まで、一貫した材料選定と技術提案が可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。