
こんにちは、プロネックです。
今回は、コイルの品質を保証する上で欠かせない「耐電圧試験(絶縁耐力試験)」についてご紹介します。
特に電気・電子機器に使用されるコイルでは、安全性や長期信頼性を左右する重要な工程です。「そもそもどんな試験なのか?」「どんな基準で判定されるのか?」といった疑問にもお答えしていきます。
1. 耐電圧試験とは?
耐電圧試験(Dielectric Withstand Test)は、コイルに使用される絶縁材料が高電圧に耐えられるかを確認するための試験です。通常使用時には発生しないレベルの電圧を一定時間印加し、絶縁破壊や異常電流が発生しないことを確認します。
この試験が必要な理由は以下の通りです:
- 絶縁不良による短絡事故の防止
- 安全規格(IEC、JIS、UL など)への適合確認
- 長期信頼性の向上
- 製造工程における品質チェック
2. 耐電圧試験の基本原理
コイルには、エナメル線の皮膜、ワニス、絶縁紙など、さまざまな絶縁材料が使用されています。耐電圧試験では、これらが想定以上の高電圧に耐えられるかを評価します。
主な試験方法は以下の2つです:
- 交流耐電圧試験(AC):一般的な耐電圧評価方法
- 直流耐電圧試験(DC):高インピーダンス製品や容量の大きな製品向け
3. 測定方法
3.1 試験環境の準備
- 試験電源(耐電圧試験機)を用意
- 試験対象(DUT: Device Under Test)のコイル端子の確認と接続準備
- 試験環境の安全確保(感電防止のための適切な措置)
3.2 接続方法と試験条件
主に以下の部分間で絶縁性能を確認します:
- 巻線とコア間
- 巻線層間、タップ間などの巻線同士の絶縁
試験条件の目安:
- 印加電圧:定格電圧の2〜5倍程度
- 試験時間:1秒〜1分程度
- リーク電流の上限:数mA〜数十mA
3.3 測定手順
- コイルのリード線を試験機に接続
- 所定の高電圧を印加
- 一定時間その状態を保持
- リーク電流の測定
- 絶縁破壊等、異常の有無を確認
※異常がある場合(絶縁破壊、リーク電流過大など)、絶縁不良として不合格になります。
4. 測定結果の判断基準
4.1 合格の条件
- 絶縁破壊がないこと
- リーク電流が規定値以下であること
4.2 不合格の原因例
- 巻線のエナメル皮膜の劣化
- 製造工程中での絶縁破損
- コイルとコア間の絶縁材の劣化
- 湿気や汚染による絶縁性能低下 など
5. 試験の種類と用途
5.1 交流耐電圧試験(AC)
- 一般的な試験方法
- 絶縁物の交流電圧に対する強度を確認
- 漏れ電流の影響を受けやすい
5.2 直流耐電圧試験(DC)
- 高インピーダンスの部品や、大容量製品向け
- 絶縁材の時間依存特性を評価可能
- 表面リーク電流の影響が少ない
5.3 インパルス耐電圧試験
- 過渡的な高電圧(雷サージ、スイッチングサージ)への耐性を評価
- トランスやモーター等の製品で多用
6. 安全対策
耐電圧試験では高電圧を扱うため、作業者の安全対策が非常に重要です。
6.1 試験環境での対策
- 絶縁手袋や絶縁マットの使用
- 試験エリアの隔離
- 高電圧警告ラベルの貼付等、明確な高電圧表示
6.2 作業者の行動ルール
- 一人作業を避ける
- 試験後の十分な放電処理
まとめ
コイルの耐電圧試験は、安全性・信頼性・製品品質を保証するうえで欠かせない評価工程です。正確な測定と厳格な基準でのチェックにより、事故リスクを未然に防ぐことができます。
プロネックでは、こうした耐電圧試験をはじめとする各種品質試験を徹底し、高品質なコイル製品をご提供しております。コイルの試作や品質評価についてお困りごとがございましたら、弊社のWEBお問い合わせフォームから、ぜひお気軽にご相談ください。