寸法や抵抗値など巻線仕様はどれを優先すべき?
作りたいコイルを考えた場合、形状や抵抗値、インダクタンスなどの巻線仕様の中でどれを優先するかで、生産性が大きく変わってきます。この記事では、コイルを設計する際に考慮すべき点を具体的に解説します。
コイルの設計とは
コイルの設計とは、どのような形のコイルを使うか、どの電線を使うか、また巻き数をいくつにするかなどの巻線仕様を決めることを指します。その際に考慮すべきポイントとなる、コイルの形、電線、巻数について簡単に説明します。
コイルの形について
当社で生産しているコイルの形には、主に下記6つ があります。
・丸コイル
・角コイル
・多角形コイル
・扇形コイル
・アルファ巻きコイル
・小判形コイル(楕円)
さまざまな用途に対応できるように、当社では多種多様な形のコイルを生産可能です。角コイルや小判形コイルの製造が多く、様々な製品に採用されています。また最近当社でも携わる機会の多いワイヤレス充電器には、薄型の丸コイルなどが使用されています。
コイルの電線について
コイルを設計する際にどの電線を選ぶかは、主に熱に関係する観点で決定されます。
・コイルの耐熱温度(発熱)はどれくらいか
・最大どれくらいの電流を流すのか
・交流電流の場合、周波数はどれくらいか
・表皮効果を考慮するかどうか、より線か単線か
・融着線を使うか、ワニスを使うか
・どれくらいの絶縁能力が必要か
・振動や衝撃を考慮する必要があるか(組立の場合)
これらを具体的に考え、線材を決定します。
コイルの巻数について
コイルを何回巻くかの巻数は、以下の4つのどれを重視するかで決まります。
・抵抗値
・インダクタンス
・磁束密度
・外形寸法
形状を優先し、小さなコイルを作りたいとなった場合、電線を強く引っ張ることで小さなコイルになりますが、その分、コイルの抵抗値は上がります。何を優先するかを決めて設計することが大切となってきます。
コイルの設計の仕方とは
コイルを設計する際に、どのような巻線仕様を優先するかを決める必要があります。なるべく小さなコイルを設計したいというのが開発する方の多くの希望だと思いますが、小さなコイルを作るためには、電線を強く引っ張って巻き付ける必要があります。そうなるとコイルの抵抗値は上がります。一方で、抵抗値を下げることを優先すると、電線をゆるく巻く必要が出てくるので、大きなコイルが作られます。
また太い電線を採用すると抵抗値は下がり、細い電線を使えば抵抗値は上がります。このようにコイルを設計する際にはどの仕様を優先するかで生産方法が変わってきます。
コイルの巻線仕様は、大きく分けると以下の3つ があります。
1 コイルの形状を優先
2 抵抗値を優先
3 インダクタンスを優先
それぞれを優先した場合、どうなるか具体的に解説していきます。
コイルの形状を優先した場合
作ろうとしている製品によってコイルの形状やサイズは変わってきます。コイルを装置に組み込む際に、限られたスペースにコイルを収める必要があります。コイルの断面図を見ると一目瞭然ですが、幅(W)×高さ(H)の中に、何本の電線を収めることができるかを計算します。仕上がり外径(φ)を決めることで、コイルの断面積に収まる巻数が以下の
計算式で出てきます。
まず1層目に巻線可能な巻数N1は、こちらの計算式で求めることができます。
N1=W/φ
積層可能な層数nは、整列密着の場合、以下の計算式で層数を算出します。
n=(H-φ)/(0.866*φ)+1
n層から、(n+1)層へ積層される箇所の層数をn’として計算できます。
n’=H/φ
密着巻きでは占積率は約85〜87%で最も多くの本数を入れることができます。 一般的に占積率が高い方が、限られたスペースに多くの電線を並べることができるので、良いとされています。しかしながら、お客さまから「現行品と全く同じコイルを生産してほしい」といった要望があった際には、性能を合わせるために、あえて占積率を下げて製品を生産する場合もあります。
抵抗値を優先した場合
コイルの抵抗値を優先したい場合は、導体径が決まれば電線の長さが決まってしまうということになります。従って、コイルの内径や厚さが決まれば、巻数が決まります。
コイルの直流抵抗値は、以下の計算式で算出できます。
コイルの平均径×巻数×電線の単位長当たりの抵抗値
=使用する電線の長さ×電線の単位長当たりの抵抗値
単位長当たりの抵抗値は、 JISや電線メーカーのカタログなどに記載されています。
また電線を引っ張る強さで、抵抗値は変わってきます。小さいコイルを作ろうと強く引っ張って巻き付けると当然、抵抗値は上がってしまいます。巻線時のテンションの強弱で抵抗値が変化するので、設計の際に変動要因として考えて調整する必要があります。
インダクタンスを優先した場合
コイルのインダクタンスは、長岡係数を使った計算式で算出します。計算結果には誤差がある場合もあるので、実際に巻線時にテンションを調整する必要があります。
インダクタンスは測定設備や測定環境で大きく変化するため、狙うことが難しいコイル固有の値です。
・コイルの長さが同じであれば断面積が大きいほど大きくなる
・コアに使う物質の透磁率が高いほど大きくなる
・巻数を増やせば大きくなる
インダクタンスだけではありませんが、値の測定はお客さまと測定条件(設備、環境、コイルの接続方法)ができる限りそろうように事前に確認をします。
まとめ:コイルのご相談はプロネックに
作ろうとしている製品によってコイルの形状やサイズは変わってきます。コイルの大きさや形を優先したいのか、抵抗値を優先したいのか、考慮した上で設計すると制作の流れもスムーズになります。当社では、空芯コイル巻線機や治具を自社開発しており、導体径φ0.02~φ0.90程度の丸線から撚り線(リッツ線)、平角線などあらゆる電線に対応可能です。また30年以上、コイルの製造実績があり、蓄積されたノウハウで製品ごとに異なるお客さまの品質要求に対して、さまざまな対策を練ることができます。コイルの生産をお考えの方は、プロネックにお気軽にご相談ください。